2007年12月19日
懲りない奴 (釣り人編)
入渓の時の高揚感はすでにない。
これまで、何回キャスティングしたのだろうか。
そして同じ回数、フライは何事も無く足元まで流れてきている。
仕事やら家族サービスやらで1ヶ月ぶりの釣行であるが、
大型連休の最終日なので、ある程度は覚悟していた。
実際この川に入渓するまでいくつかの川を見てきたが、
どこも車、車、車、車、そして人、人、人、人、。
ようやく車の少ないこの川のこの区間に入渓したのだが。
全く反応が無い。
多分、今朝早く、あるいは昨日まで人が入っていたのだろう。
それにしても魚がいないのか、それともいるけど反応がないのか。
それすらも分からない。
しかし、今さら場所を変えても状況はほとんど変わらないだろう。
これまで、何回キャスティングしたのだろうか。
そして同じ回数、フライは何事も無く足元まで流れてきている。
仕事やら家族サービスやらで1ヶ月ぶりの釣行であるが、
大型連休の最終日なので、ある程度は覚悟していた。
実際この川に入渓するまでいくつかの川を見てきたが、
どこも車、車、車、車、そして人、人、人、人、。
ようやく車の少ないこの川のこの区間に入渓したのだが。
全く反応が無い。
多分、今朝早く、あるいは昨日まで人が入っていたのだろう。
それにしても魚がいないのか、それともいるけど反応がないのか。
それすらも分からない。
しかし、今さら場所を変えても状況はほとんど変わらないだろう。
さて、目の前に一級ポイントのひらきが現れた。
今時分のできるアプローチ、キャスティング、
プレゼンテーション、ドリフトを駆使する。
しかし、また何事もなくフライが足元に流れていた。
さすがに、集中が切れた。
少し休憩することにした。
こういう風に言う人がいる。
「この素晴らしい景色の中で釣りをすることで十分!
釣れなくたって、満足だよ。」
私にとって半分は当たっているが半分は当たっていない。
確かにこの素晴らしい景色の中で釣りをすることは、
何にも変えがたい素晴らしい時間である。
しかし、景色を楽しむなら、竿を持たなくてもよい。
私の場合、竿を持って入渓するということは、
すでに釣果を求めていることになる。
残念ながら、釣れない釣りを心から
楽しむような悟りはまだ開いていない。
さて、重い腰を上げて、また釣り始める。
相変わらず、何事もなくフライは足元まで流れてくる。
そして、とうとう釣り始めてから5時間が過ぎた。
この状況を、釣りをしない人が見たらこういうであろう。
「何のために、そこまでするの?」
同じ事を自問したくなってきた。
また目の前に一級ポイントが現れた。
一体今日何個目の一級ポイントだろうか。
流れを二分するように大岩があるが、
右岸側の流れが大きく、いかにもな落ち込みとひらきを形成していた。
対して左岸側の流れは細く、落ち込みも小さかった。
まずは右岸側の流れを攻める。
またしても、何事もなく足元まで来るフライ。
左岸の流れは魅力的ではないので、
一瞬パスして次のポイントに行こうとしたが。
ロールキャストで少し前方に打ち込み、
ピックアップしてフォルスキャストを3度ほどしてから、
左岸側の小さな流れに打ち込む。
ゆっくり流れてくるフライ。
ドラグがかかりそうになる。
縦のメンディングを一回入れたその時。
「バシャ!」
大きな水飛沫が上がった。
しかし、自分でも驚くほどに冷静に、適度が力であわせを入れた。
「大きい!」
尺前後の引きだと確信する。
「ばれるなよ!」
一度だけ、心の中でつぶやいて、
あとは無心でやり取りした。
しばらくすると、立派な体をした尺イワナが
ランディングネットに収まっていた。

さっきの自問が頭をよぎる。
「何のために、そこまでするの?」
その答えは分かっていた。
というか、そんなこと分かりきっている。
「この瞬間のためさ!」
尺ぴったりのそのイワナの写真を数枚取り、
丁寧に流れに返してあげた。
やっと一連の流れが完成した。
時計を見ると、まだ予定退渓時刻よりは早かったが、
ちょっと早く上がって、温泉にでもつかろうかなと考えた。
――――――――――――――――――――――――
1時間後。
結局温泉には入っていなかった。
まだ川の中にいた。
さっきの尺イワナから何回キャスティングしたのだろうか。
そして同じ回数、フライは何事も無く足元まで流れてきている。
これを人が見たら、こういうだろう。
「いつまで、そんな無駄なことをするの?」
その答えは分かっている。
というか、そんなこと分かりきっている。
「釣れるまでさ!」
(この文は限りなくノンフィクションに近いフィクションです(爆))
今時分のできるアプローチ、キャスティング、
プレゼンテーション、ドリフトを駆使する。
しかし、また何事もなくフライが足元に流れていた。
さすがに、集中が切れた。
少し休憩することにした。
こういう風に言う人がいる。
「この素晴らしい景色の中で釣りをすることで十分!
釣れなくたって、満足だよ。」
私にとって半分は当たっているが半分は当たっていない。
確かにこの素晴らしい景色の中で釣りをすることは、
何にも変えがたい素晴らしい時間である。
しかし、景色を楽しむなら、竿を持たなくてもよい。
私の場合、竿を持って入渓するということは、
すでに釣果を求めていることになる。
残念ながら、釣れない釣りを心から
楽しむような悟りはまだ開いていない。
さて、重い腰を上げて、また釣り始める。
相変わらず、何事もなくフライは足元まで流れてくる。
そして、とうとう釣り始めてから5時間が過ぎた。
この状況を、釣りをしない人が見たらこういうであろう。
「何のために、そこまでするの?」
同じ事を自問したくなってきた。
また目の前に一級ポイントが現れた。
一体今日何個目の一級ポイントだろうか。
流れを二分するように大岩があるが、
右岸側の流れが大きく、いかにもな落ち込みとひらきを形成していた。
対して左岸側の流れは細く、落ち込みも小さかった。
まずは右岸側の流れを攻める。
またしても、何事もなく足元まで来るフライ。
左岸の流れは魅力的ではないので、
一瞬パスして次のポイントに行こうとしたが。
ロールキャストで少し前方に打ち込み、
ピックアップしてフォルスキャストを3度ほどしてから、
左岸側の小さな流れに打ち込む。
ゆっくり流れてくるフライ。
ドラグがかかりそうになる。
縦のメンディングを一回入れたその時。
「バシャ!」
大きな水飛沫が上がった。
しかし、自分でも驚くほどに冷静に、適度が力であわせを入れた。
「大きい!」
尺前後の引きだと確信する。
「ばれるなよ!」
一度だけ、心の中でつぶやいて、
あとは無心でやり取りした。
しばらくすると、立派な体をした尺イワナが
ランディングネットに収まっていた。

さっきの自問が頭をよぎる。
「何のために、そこまでするの?」
その答えは分かっていた。
というか、そんなこと分かりきっている。
「この瞬間のためさ!」
尺ぴったりのそのイワナの写真を数枚取り、
丁寧に流れに返してあげた。
やっと一連の流れが完成した。
時計を見ると、まだ予定退渓時刻よりは早かったが、
ちょっと早く上がって、温泉にでもつかろうかなと考えた。
――――――――――――――――――――――――
1時間後。
結局温泉には入っていなかった。
まだ川の中にいた。
さっきの尺イワナから何回キャスティングしたのだろうか。
そして同じ回数、フライは何事も無く足元まで流れてきている。
これを人が見たら、こういうだろう。
「いつまで、そんな無駄なことをするの?」
その答えは分かっている。
というか、そんなこと分かりきっている。
「釣れるまでさ!」
(この文は限りなくノンフィクションに近いフィクションです(爆))
タグ :フィクション
Posted by まつやん at 23:13│Comments(17)
│書き物
この記事へのコメント
こんばんは。
フィクションとは言え私も同じ心情ですな。
いったいいつになったら落ち着いた釣りが出来るんだろうと思います。
手応えのある1匹が釣れても「あと1匹」って、結局暗くなるか疲れきるまで終われません。
フィクションとは言え私も同じ心情ですな。
いったいいつになったら落ち着いた釣りが出来るんだろうと思います。
手応えのある1匹が釣れても「あと1匹」って、結局暗くなるか疲れきるまで終われません。
Posted by release-windknot at 2007年12月19日 23:42
まつやんさん、こんばんわ!
私は無我夢中で、まず1匹!っと考えていますよ(笑)
自分に問いかけることはあまりないです(笑)
それにしても立派なイワナですね!!
久々の釣り楽しめたのではないですか!?
私は無我夢中で、まず1匹!っと考えていますよ(笑)
自分に問いかけることはあまりないです(笑)
それにしても立派なイワナですね!!
久々の釣り楽しめたのではないですか!?
Posted by エレメント at 2007年12月19日 23:53
おはようございます
半フィクション・・実話・・ベースの話ですね、
川に行った事の無い私でも同感です、次は・
・・で止める事が出来ません・・今は体力が切れるのですぐに終ります。
鰭ピンのイワナ、こんなのが出るから止められないんですね。
kawatombo kenさんの所に投稿すればよかったのに・・・。
では 又。
半フィクション・・実話・・ベースの話ですね、
川に行った事の無い私でも同感です、次は・
・・で止める事が出来ません・・今は体力が切れるのですぐに終ります。
鰭ピンのイワナ、こんなのが出るから止められないんですね。
kawatombo kenさんの所に投稿すればよかったのに・・・。
では 又。
Posted by type r tata at 2007年12月20日 07:39
こんばんは!
こういう気持ち分かります^^
いつまででも渓流と魚に
触れ合っていたいですね!
こういう気持ち分かります^^
いつまででも渓流と魚に
触れ合っていたいですね!
Posted by もと at 2007年12月20日 18:58
何か 皆さん 「文才」スキルが 高すぎ(´ω`)・・・
オイラには 書けません(^^ゞ・・・
やっぱ デカイ岩魚は 「モノクロ」でも 迫力あるネ♪~
オイラには 書けません(^^ゞ・・・
やっぱ デカイ岩魚は 「モノクロ」でも 迫力あるネ♪~
Posted by きょん^^; at 2007年12月20日 19:53
釣り人はバカなのです。
自分でも分かりきってるんです。
でもまた行くんです。
こんな一瞬のためにね!
そう私も立派なバカですよ(爆
自分でも分かりきってるんです。
でもまた行くんです。
こんな一瞬のためにね!
そう私も立派なバカですよ(爆
Posted by のしろ at 2007年12月20日 23:43
こんばんは。
読みいってしまいました♪
釣果だけを気にするなら餌の方が圧倒的に有利な訳で、敢えて効率の悪いフライで釣ってるって事は、餌師のように漁師的な釣果を求めてる訳ではなく、まさに「その瞬間」に喜びを感じるために釣ってるんだと思います。
釣り上げてみて「なんだ小さいなぁ」と思うこともあるけれど、「その瞬間」は何度経験しても興奮しちゃいますね♪
読みいってしまいました♪
釣果だけを気にするなら餌の方が圧倒的に有利な訳で、敢えて効率の悪いフライで釣ってるって事は、餌師のように漁師的な釣果を求めてる訳ではなく、まさに「その瞬間」に喜びを感じるために釣ってるんだと思います。
釣り上げてみて「なんだ小さいなぁ」と思うこともあるけれど、「その瞬間」は何度経験しても興奮しちゃいますね♪
Posted by みかん at 2007年12月21日 00:43
こんばんは
「限りなくノンフィクションに近いフィクションです」
この言葉、すっごく的を得すぎていますね。
呼んだ人たちは皆(もちろん私も含めて)、ひしひしと
共感できる話だと思います。
「限りなくノンフィクションに近いフィクションです」
この言葉、すっごく的を得すぎていますね。
呼んだ人たちは皆(もちろん私も含めて)、ひしひしと
共感できる話だと思います。
Posted by jbopper at 2007年12月21日 00:44
こんにちは
ほんと懲りないヤツですね。(笑)
そして来年も、何度も、「何事もなくフライは足元まで流れてくる」を経験するのでしょうね。
うーん、来年が思いやられます。(汗)
ほんと懲りないヤツですね。(笑)
そして来年も、何度も、「何事もなくフライは足元まで流れてくる」を経験するのでしょうね。
うーん、来年が思いやられます。(汗)
Posted by hajihadu at 2007年12月21日 11:18
こんにちは
「何でフライを流すかって?」
「そこに流れがあるから」
それで充分でしょう!
「何でフライを流すかって?」
「そこに流れがあるから」
それで充分でしょう!
Posted by SAGE愛好会 at 2007年12月21日 12:51
こんばんは!
あれっ、この作品はエントリーされないんですか?(今からでもOKですよ!)
皆さん、オフシーズンで自分の内面に向き合っている様ですね(;^^A
「何のために、そこまでするのか?」
「坊やだからさ」(笑)
あれっ、この作品はエントリーされないんですか?(今からでもOKですよ!)
皆さん、オフシーズンで自分の内面に向き合っている様ですね(;^^A
「何のために、そこまでするのか?」
「坊やだからさ」(笑)
Posted by Kawatombo Ken at 2007年12月22日 18:52
→release-windknotさんへ
釣り人だったら同じかもしれませんね。
「あと1匹」の気持ちも分かります^^
そして「泣きの一投」が延々と続きます(爆)
→エレメントさんへ
無我夢中かぁ。
そこそこつれてるといいのですが、
あまりに釣れないと自問自答しちゃいます。
それから、今回のフィクションですよ^^
釣り人だったら同じかもしれませんね。
「あと1匹」の気持ちも分かります^^
そして「泣きの一投」が延々と続きます(爆)
→エレメントさんへ
無我夢中かぁ。
そこそこつれてるといいのですが、
あまりに釣れないと自問自答しちゃいます。
それから、今回のフィクションですよ^^
Posted by まつやん at 2007年12月24日 13:24
→type r tata さんへ
かなり実話ベースの話です^^
私も体力ないのに、続けてしまうので
疲れきってしまいます。
でもあんなイワナが出たらやめられないですよねぇ。
kawatombo kenさんのところには、
別の作品をば。
→もとさんへ
分かってもらえてうれしいです^^
止められない♪ 止まらない♪
って感じです。
かなり実話ベースの話です^^
私も体力ないのに、続けてしまうので
疲れきってしまいます。
でもあんなイワナが出たらやめられないですよねぇ。
kawatombo kenさんのところには、
別の作品をば。
→もとさんへ
分かってもらえてうれしいです^^
止められない♪ 止まらない♪
って感じです。
Posted by まつやん at 2007年12月24日 13:27
→きょんさんへ
文才と言うよりは妄想というか…^^;
来年はあんなイワナ釣ることできるかなぁ・
(無理だ…^^;)
→のしろさんへ
そうなんですよね^^
みんなきっとバカなんですよね!
でもそんな自分がきっとみんな好きなんですよね。
私ももちろんバカです^^
文才と言うよりは妄想というか…^^;
来年はあんなイワナ釣ることできるかなぁ・
(無理だ…^^;)
→のしろさんへ
そうなんですよね^^
みんなきっとバカなんですよね!
でもそんな自分がきっとみんな好きなんですよね。
私ももちろんバカです^^
Posted by まつやん at 2007年12月24日 13:29
→みかんさんへ
ご精読ありがとうございます^^
全くみかんさんのコメントの通りだと思います!
その一瞬のために何もかも我慢できちゃうんですよね。
FFMはバカであり、そしてMであると思います^^
→ jbopper さんへ
ありがとうございます。
このようなことがこれまで何度あったことか(笑)
それでもやめられないんですよね。
あの一瞬を一度味わっちゃうと^^
ご精読ありがとうございます^^
全くみかんさんのコメントの通りだと思います!
その一瞬のために何もかも我慢できちゃうんですよね。
FFMはバカであり、そしてMであると思います^^
→ jbopper さんへ
ありがとうございます。
このようなことがこれまで何度あったことか(笑)
それでもやめられないんですよね。
あの一瞬を一度味わっちゃうと^^
Posted by まつやん at 2007年12月24日 13:33
→hajihadu さんへ
すいません、懲りない奴で(笑)
来年も、またその来年も、
釣りにいける限りは同じ事を繰り返すんでしょうね^^
あの瞬間のために!
→SAGE愛好会さんへ
「そこに流れがあるから」
まさにそのとおりですね^^
でもその先の釣果をやっぱり期待したりなんかして…^^;
すいません、懲りない奴で(笑)
来年も、またその来年も、
釣りにいける限りは同じ事を繰り返すんでしょうね^^
あの瞬間のために!
→SAGE愛好会さんへ
「そこに流れがあるから」
まさにそのとおりですね^^
でもその先の釣果をやっぱり期待したりなんかして…^^;
Posted by まつやん at 2007年12月24日 13:37
→Kawatombo Ken さんへ
別の作品を後ほどエントリーしますので
よろしくお願いいたします。
実はいくつか書きかけているのですよ^^v
別の作品を後ほどエントリーしますので
よろしくお願いいたします。
実はいくつか書きかけているのですよ^^v
Posted by まつやん at 2007年12月24日 13:39