ナチュログ管理画面 フライフィッシング  フライフィッシング 北海道・東北 アウトドア&フィッシングナチュラムアウトドア用品お買い得情報
ブログ作成はコチラ
あなたもナチュログでアウトドア生活を綴ってみませんか?
プロフィール
まつやん
まつやん
性別:♂  生年:1972年  
本籍:秋田県
趣味:フライフィッシングと日本酒!  
フライデビュー:1999年    
家族:妻0人、愛娘1人、息子1人^^     
Information
アウトドア用品の
ご購入なら!

アクセスカウンタ

2007年10月07日

ジエツサワ その4(最終話)

…その3から続く


「でかい…。」

少なく見積もっても50cm以上はある。
もしかしたら65cmくらいはあるかもしれない。
1m位の深さに定位しているが、水がきれいなせいもあり、
一目見てイワナとわかる斑紋が背中にあるのが見える。
魚がでかいので、斑紋の大きさも半端ではない。
口にフライが刺さっているはずなのに全く意に介さず
定位している。
リーダーとティペットは5xに変えていたが、
太刀打ちできる魚ではない。
とりあえず7~8m離れたところからゆっくり、
でもかなり力を入れて引っ張ってみる。
すると一瞬魚はこちらを向いた。
引っ張られて魚体がこちらを向いたのではなく、
まるで、私を確かめるかのように頭をこちらに向けたのである。

その後また上流を向いて定位したが、おもむろに反転し、
下流に向かい始めたのである。
走る、というよりは流れに身を任せて、
流れと同じ速度で下流に向かっていった。
当然私もそれについていく。
何とか、ラインを10mくらいに保ったまま、
同じ速度で川を下っていく。
その魚は暴れているわけではないが、
大きい上に流れの抵抗が加わり、引き寄せるのは不可能である。
でも、なんとかしたいという一心で魚についていく。

「どこまで行くんだよ!」

そう思いながら、魚と一緒に下流へ下流へと移動する。
それにしても大きい。
太さはまさに一升瓶、長さは一升瓶よりも長い。
それにしても緑色の背中の斑紋がすごい。
魚類というよりハチュウ類の雰囲気がする。
その大イワナはなかなか下流に行くのをやめない。
そして、数時間かかって釣りあがってきた区間を
この大イワナと一緒に10数分で戻って来てしまった。
なんと入渓点まで戻って来てしまったのである。

そこで大イワナは一度下流へ下るのを止めた。
そして一度こちらを向いたかと思うと先ほどとは違う速度で
、今度は下流に向かって走り出した!
あまりの急なスピード変化に焦って走り出そうとすると、
底石ですべった!

「マジで!?」

大イワナがかかっているのに!

と思った瞬間

「バシャン!」

なんてこった、今日2回目の転倒、水没…。
でも、あんだけ釣ったからいいか、
でも本当に過去に行っていたらどうやって戻ったらいいんだろ…。

そう思いながら、川の中から立ち上がる。
と、目の前の川岸に朽ち果てた缶コーヒーの空き缶が。
ということは現代に戻ってきた!?
空き缶を見て、心の底からほっとしたのはこれが始めてである。
時計を見るとさっきまで止まっていた時間と同じであるが、
秒はちゃんと動いている。

「ロッドは!?」

ロッドは少し下流の岩に引っかかっていた。
慌てて回収しに行く。
ロッドを持ち上げると、プルプルとした手ごたえが!
一瞬、あの大イワナか!?と思ったがさっきまでの重さではない。
ラインをたぐると、20cmに満たない小さなイワナが
かかっていたのである。

あの大イワナはどこに行ったのだろうか?
それよりさっきまでの釣りは現実だったのか?
転倒した瞬間のショックで見た夢のようなものだったのだろうか…。

そんなことを考えながら、その小さなイワナの写真をとろうとしたら、
今度は何事もなかったようにカメラの電源が入った。
2,3枚ぱちりと写真に収め、リリースしようとして
フックを外した瞬間、心臓が止まると思うくらいドキッとした。
フライを見ると、ぼろぼろになっており、
ハックルがなくなっていたのである!

この小さなイワナでこんなになるはずがない…。
やはりさっきまでの釣りは本物だったんだ!
確かに右腕もかなりだるい。
(転んだ時に腕に力が入ったんだよ、
と言われるとそれまでであるが^^;)

足も結構がくがく来ているし。
(入渓するときの斜面を下るので、
へろへろになったんだよ、といわれるとそれまでであるが(爆))

写真にはもちろん残っていないが、記憶とフライに
さっきまでの釣りが鮮明に残っている。
腕時計の時間から考えると、入渓したばかりであるが、
満足感は十分あったし、何より気味が悪かったので、
その日は入渓点から帰る事にした。

きつい斜面を登りながら考えた。
あの場所で転倒して、水没したことが
変なことが起こったきっかけにしか思えない。
とすると、もしあの大イワナが、
入渓点まで連れて来てくれなかったら?
もしかして、この渓で行方不明になる釣り人って、
現代に戻ってこれなくなった人だったりして…!?
こんなことを真剣に考えている自分を客観的に見ると
かなりおかしいが、やはりどうしても考えてしまう。

そんなことを考えていると、やっと林道に出た。
林道に出るまででかなりの運動になっているので
寒くはなかったが、さすがに全身びしょびしょで気持ち悪い。
入渓点の目印である「ジエツサワ」の看板を見ながら着替えていたが、
いつもはそんなことを考えないが、
今日は「ジエツ」という文字を見て思わず頭の中で
漢字変換したのである。

「ジエツってもしかして『時越』?」

もしかして、今日の私と同じ体験をした人が、
その体験を沢の名前にして残したのかもしれない…。

着替えを終え、林道を帰る途中こう考えていた。
今日のことは誰にも言うまい。
言ったところで信じてもらえない。
信じてもらおうとして具体的に説明すると、
この場所にきて、興味本位で試すかもしれない。
そんなことをして知り合いが本当に過去に行って、
それだけならまだしも、現代に戻ってこれなくなって
行方不明なったりしたら、たまったものではない。

しかし、これだけは確信できる。
私は太古のH川で釣りをしてきたのだと。

さて、この話は誰にも言うまい、と思った私であるが、
何故このように話す気になったか。
それは、ちょうどあのH川の「ジエツサワ」より下流にダムが建設され、
あの転倒、水没ポイントはもちろんのこと、
ジエツ沢の看板も、林道も水没してしまったからである。

現在は以前の林道の、ダム湖を挟んでちょうど対岸に新しい林道ができている。
この話を聞いて、もし半信半疑で確かめようとしても
もう確かめる術はない現在、この話をしてもいいかなと思ったのである。
(渇水になると林道の一部は見えるのであるが…)

この話を聞いて、信じる人はまずいないだろう。
でも、私は確信している。
あれは夢や幻想なんかではなく、私は本当に太古のH川で釣りをしたのだと。
太古のH川の素晴らしさやきれいな渓魚の姿は
いまでもこの目にしっかりと焼きついている。

PS
あのぼろぼろになったエルクヘアカディスは
フライボックスの中で殿堂入りしている(笑)


(フィクションだと思うんですけど…^^)


同じカテゴリー(書き物)の記事画像
ホームリバーの中を
禁断症状
ダブルヒット?シングルヒット?
懲りない奴 (釣り人編)
懲りない奴 その2 イワナ編
懲りない奴
同じカテゴリー(書き物)の記事
 ホームリバーの中を (2009-01-17 21:04)
 もう、いやらしいっ! 準備編 (2008-04-15 22:31)
 禁断症状 (2008-04-12 22:14)
 ダブルヒット?シングルヒット? (2008-01-11 22:16)
 懲りない奴 (釣り人編) (2007-12-19 23:13)
 ジエツサワ その3 (2007-10-06 20:00)

この記事へのコメント
ええ ラベンダーの香りを嗅ぐと
越えてしまうんです 

この間も実際越えたと思ったんですが、堰堤が大雨で崩壊して流されてたんですね オイオイ
Posted by tom at 2007年10月07日 21:56
ナルホド!『ジエツ』はそれでしたか!

ノンフィクションであって欲しい
そう願うのは私だけでしょうか^^
Posted by のしろ at 2007年10月07日 22:00
う~ん!
超面白かったんですけど~O(≧∇≦)O イエイ!!
読み応え充分っす!
連載しましょうよ^^
Posted by yogoreのmakoto。 at 2007年10月07日 22:15
本出しましょう!
私買います!

いや~このまま連載出来そうでしたが、
次回をまた楽しみにしてます^^。

マジで本出しましょう!
Posted by アレルギー at 2007年10月07日 23:55
いやはや、無事に時空を越えられて、現世にお戻りいただきましたこと、感謝感謝です。とはいえ、多くの釣り人には「幻想」のごとき思い出がいくつかは残っているはず。そうでなければ、いい歳になってまで、竿を振り続けているはずもないのですから。
Posted by ひげオヤジ at 2007年10月08日 00:20
まつやんさん、
お見事!
主のイワナが連れ戻してくれたんですね。
Posted by jbopper at 2007年10月08日 00:23
改めて、1~4を連続して読み返してみましたよ!
・・・凄い!
何が凄いって、タイプスリップしたことよりも、タイムスリップをしたにも関わらず、動じること無く釣りを続けてしまう(オイオイ!)この漢の「釣バカっぷり」!!(笑)
きっとこの漢は、現代に戻れたことを喜ぶより、大物を逃したことを悔やんでいるに違いない!
そうでしょう、まつやんさん♪
Posted by Kawatombo Ken at 2007年10月08日 00:25
 まつやんさん、おはようです!

 連荘お疲れ様です! てか、そちらにも
そんなでかいイワナいるんですね!?
驚きました! 5xでは厳しいですよね…
私は昨日4x切られてしまいました、バカ合わせなし
キタッ!と体勢整えたらブチッと…。
 私が帰った後に、隊長さん70オーバー釣ったとメールきましたよ!?

 今日もまつやんさん行ってるんでしょうか!
また夕方にでもお邪魔しますね♪
(鮭釣りは終盤気味…仕事忙しく行けず終わってしまいそうです)
Posted by エレメント at 2007年10月08日 06:19
こんにちは。

東北地方の方は、作家のすぐれた方が
たくさんいらっしゃる様で
村田久さんを初め、ま○○んさん
まで!(笑
Posted by mario. at 2007年10月08日 09:10
こんにちは

大作の完結、お疲れ様でした。(笑)
私のふるさともダムの底に沈んじゃいましたので、ジエツザワがなくなっちゃった事が非常に残念に思えました。
きっと、今後も更に続くと思われる次回作を楽しみにしております。(笑)
Posted by hajihadu at 2007年10月08日 11:46
→tomさんへ
 ラベンダーで越えちゃうんですか!?
 今度川にラベンダーの香りを持っていこうかな(笑)
 それにしても大雨の力はすごいですよね。


→のしろさんへ
 ご精読ありがとうございました。
 のしろさんもそのうちこんな体験するかも!?
Posted by まつやん at 2007年10月08日 13:24
→yogoreのmakoto。 さんへ
 ありがとうございます^^
 連載ですか!?
 う~ん、ネタがないですねぇ。
 でも不定期にアップしていきます^^


→アレルギー さんへ
 いやいや、そんなそんな^^;
 時間超えたまま、2~3日粘れば良かったかな(笑)
Posted by まつやん at 2007年10月08日 13:28
→ひげオヤジさんへ
 無事にバックトゥザフィーチャーできました^^
 たしかに、釣り人って多かれ少なかれ
「幻想」のような経験をしているかもしれませんね。
 こんどはひげオヤジさんのフィクションが読みたいです。


→jbopper さんへ
 結果的には大イワナが戻してくれたのかな?
 こんなこともあるかもしれないので、
 魚は優しくリリースしていきたいと思います(笑)
 
Posted by まつやん at 2007年10月08日 13:35
→Kawatombo Kenさんへ
 多分、私も含めて、ここに来られる皆さんは、
 同じように釣り続けるのではないかと(笑)
 「彼」はしばらく大イワナの夢を見たとか、見ないとか(爆)


→エレメントさんへ
 フィクションなのですが、モデルになった岩魚を…、
 見たことはあります(釣ったのではありません^^;)
 この大イワナの話もいつかしたいです^^

 隊長さんは70cmですか!
 想像できましぇーん!
Posted by まつやん at 2007年10月08日 13:41
→mario.さんへ
 ははは、作家だなんて^^
 しがない釣り人の妄想(実体験!?)です。
 でも、今後も妄想は不定期で続く予定です^^


→hajihadu さんへ
 お付き合いいただいてありがとうございます。
 hajihadu さんのふるさとは水の底ですか…。
 もしかしたらジエツサワがあったかもしれませんね。
 私もチョコチョコ書いていきますが、
 hajihadu さんはノンフィクションを書いて下さい。
 夜中トイレに行けなくなってもいいので(爆)
Posted by まつやん at 2007年10月08日 13:44
こんにちは

KAWATOMBO KENさんから始まり、
まつやんさん

皆さん文才ありますね~

とても面白かったですよ。

エヴァン○リオンのように、煙に巻いて
エンディングにして、小生も作っちゃおうかな~

そうだな・・・
小生が絡めるネタ・・・
「ガンダム!?」

無理だべ そりゃ・・・

全長18メートルのイワナ
背中には「RX-78」
動力は「核パルス」
どんなイワナやねん!
ビームライフルで狙い撃ちされる!
「当たれ~!!!!!!!!!!!!」
Posted by SAGE愛好会 at 2007年10月09日 12:38
→SAGE愛好会さんへ
 レス遅くなってすいませーん!
 文才というか、単なる妄想なんです、私の場合(笑)
 18mのイワナ…、まるでジンベエザメですね^^;
 
 
Posted by まつやん at 2007年10月09日 20:37
こんばんは。

先週はブログから離れていた為、まとめて読ませて頂きました。
とっても面白かったです。
次回作に期待してます^^
Posted by べーやん at 2007年10月09日 22:27
→べーやんさんへ
 ご精読ありがとうございます^^
 次回作もあるかとおもいますので、
 よろしくお願いいたしますm(_ _)m
Posted by まつやん at 2007年10月10日 18:17
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
ジエツサワ その4(最終話)
    コメント(19)